「朱奈…俺もさ…
ずっと…同じこと考えていたんだ。
あの日…お見舞いに行った日に
帰りトイレに行っただろう……。
そんときさ…かあちゃんがさ
友達に言ってたんだ。

『最高な子供たちを持って
私は幸せ。あの子たちは
私たちの誇りなの……。
私はあの子たちのために…生きている』

かあちゃんの言葉がうれしかった。
だから…俺たちが
隠れてこんなことをしていては
ダメなんだと思った。
かあちゃんを泣かせたり
絶望させるのは…人間として最低だ。
だから…どうせ俺たちが
結ばれないんだとしたら……
かあちゃんを不幸にしちゃダメだって…」


啓吾が私との間に
距離を置いていたのは
そのせいだったんだ。



「俺たち大切な家族だから…」


啓吾に抱きしめられたい気持ちを
必死におさえていた。

きっと啓吾も同じ気持ち……

それはお互いの目を見たら
わかる……。


「愛してる…
どんなことになっても
俺の一番は…朱奈だよ……。」



「愛してる…
啓吾が…誰よりも一番
大切だから……。」


お互いの目から涙が流れた。


「おにいちゃ…ん…」
声がかすれた。


「なんだ…妹よ……。」

啓吾の声も震えていた。