「俺ってさ…いったい何なんだ?」

啓吾が言った。


「何が?」ドキドキしている。


「この家族の中の一員なのに
ここに来ると俺って何って思うんだよな。」
さっきの人だってさ
おまえのことだけ…子供だと思っただろ?
俺の方が先に生まれてんだよ?
兄妹だろ?なんか変な感じなんだよな~」



「考えすぎだよ。
それより…ママたちが来る前に
早く車に入ろうよ……」


啓吾の気持ちを早くそらしたかった。



「あ…まじった…」


「え?」


「トイレ行きたかったんだ。
ちょっくらい行ってくるわ。」


啓吾はそう言うとまた戻っていった。



「ちょっと啓吾~~」



私は慌ててママにメールをした。


『啓吾がトイレに戻ったから』


私たちだって感じてる。


本人がその空気を感じないわけなんかない


家族じゃない
そうわかって私と啓吾は
堂々と愛し合えるけど


その反面
殺人者の息子という
悲劇的な境遇に啓吾が耐えられるんだろうか