頭がズキズキと痛む。
「申し訳ございません、お怪我はございませんか?」
男の後ろから、もう一人の男が走ってくる。
黒に近い紫のスーツを着た、180cmほどの男。
整った顔に長い足。
…これは、モテるな。
胸ポケットには“九龍”と書かれたテンプレート。
「私よりこっち心配しなよ」
私に覆い被さったまま気絶してる男を指差す。
明らかに重症はこっちでしょ。
「ご心配ありがとうございます」
その男―――九龍さんは私から男を引き剥がした。
―――関わりたくない。
さっさと去ろうと、埃を払って立ち上がる。
瞬間、ズキ…と足首が痛んだ。
「……っ」
「大丈夫ですか!?」
倒れそうになる私を九龍さんが支える。
「平気、放っといて」
―――気安く触んなよ。
腕を多少強引に振り払い、軽く睨む。
「さようなら」