「―――!!!」


悴んだ手を息で暖めながら歩いていると、店の裏口から怒鳴り声が聞こえてきた。


こっそり覗くと、若い男が二人。

背の高い男が、一方的に怒ってるようだった。




私は見上げるように首を上げ、店を確認する。



―――あぁ、ホスト。

その店の正体は、私の嫌いなホストクラブ。




名は、“黒蝶―ブラックバタフライ―”


確か前に雑誌で特集されてた…。

『地区一番人気を誇るイケメン揃いのホストクラブ!!“黒蝶”』



……だっけ、何でもいいけど。



私はホストという存在が大嫌いだった。

…特に理由はないけど。



ただ、昔ホストに騙されて全てを失った友達がいたから。


―――とにかく、巻き込まれないうちに退散しよう。



そう思って足を進めた瞬間、

「うわあぁぁ!!!」


「え…きゃっ!!?」

怒鳴られていた男が私に向かって吹っ飛んできた。




不意打ちを喰らった私は、男とともに倒れこむ。




「いったぁ…い」