ソファから立ち上がり、軽く手を挙げる。
「ドンペリ入ります」
そう言うと、仕事をしていた柏木さんが微笑んだ。
―――伝わった…。
「稔さん、今日いい事ありました?」
「え、何でだい?」
「ふふっ、だってすごく嬉しそうなんですもの」
私はキンキンに冷えたドンペリを稔さんのグラスに注(つ)ぐ。
その間も、麗奈さんは会話を止めない。
稔さんも楽しそうに話を続けていた。
―――すごいなぁ…。
「桜ちゃん」
急に声を掛けられ、ハッと我に返る。
「はいっ」
「桜ちゃんはさ、浮気についてどう思う?」
―――はい……?
いつの間に浮気の話になっていたんですか。
「浮気なんて絶対だめですよ、…ね?」