ホールには、オーナーだけがいた。
―――うわ、二人きりじゃん…。
なんか、緊張する。
「ぐずぐずするな!!ほらそこも、まだゴミが残ってるぞ!」
な、なんなの…この仕事!!
「おら、手が止まってる!さっさと働け!!」
―――鬼畜社長が…っ!
テーブルの上を拭き、床をモップで磨き、絨毯をはたいても、まだ終わらない。
「早くしろ!店が開いちまうぞ!!」
―――勘弁してよー!
「はぁーっ、やっと終わった」
私はどさっと赤いソファに座った。
「ったく、初日からそんなんだと、先が思いやられるな」
オーナーはネクタイを緩めながら、私の隣に座る。
―――初日からハードすぎると思います、はい。
「今日の予定は、麗奈のヘルプ。話の盛り上げ役だ」
「…はい」
「まぁ分かってると思うが、邪魔だけはするなよ。麗奈はこの店の一番星なんだからな」