「お前、名前は?」
「……桜井、梓紗」
九龍さんは指で私の涙を拭ってくれる。
ちらっと見ると目が合い、九龍さんは小さく笑った。
こう見ると、本当に紳士なんだけどな。
「歳は?」
「18……」
「いいか、梓紗。俺はお前を殺さねぇし、金も要求しねぇ、……けど」
九龍さんはじっと私を見たまま、そこで区切る。
「……けど?」
続きを促す。
「このまま、さようならってわけにもいかねぇな」
…まぁ、そうですよね。
「いかにも身体売って、帰るあてもなさそうなお前を見捨てられねぇしな」
「……え?」
「俺が拾ってやるってこと。…ただし、条件つきでな?」
…はい?