予期していなかった事態に、頭がついてこない。
私……殺されるんじゃないの?
「え…えと、」
「だから殺さねぇって言ってんだろ?」
「だって…っ、この人たち…!!」
私の目の前に倒れている男は九龍さんが……。
「そいつらとお前は状況が違ぇんだよ、…それに殺してねぇし」
よく見ると、確かにまだ息をしているようだった。
殺されないという安堵感から、ふっと力が抜け、その場にしゃがみ込んでしまった。
緊張の糸が切れ、不思議と涙が溢れる。
何度拭っても止まる事はなかった。
「おい」
九龍さんが後ろの男たちに声をかける。
それを合図に、男たちは去って行った。
薄暗い路地裏に、私の泣き声だけが響いていた。