低い声とともに、九龍さんがゆっくりと離れた。




―――ここに、この場所にいたくない……逃げたい、


直感でそう思った。





「……殺して」


「は?」



「さっさと殺してよ…っ!!」



こんな状況が続くなら、死んだ方がまし。



元々、何一つ惜しむものなんてない。





ぎゅっと唇を噛み締め、目を瞑った。



襲ってくる気配に耐えられるように。







「…何、勘違いしてんだよ、小娘が」


九龍さんの言葉は、あまりにも予想外で。




「……へ?」


なんともまぬけな声を出してしまった。




「んな面倒臭ぇこと、誰がやるかっつーの」




煙草を燻らしながら、九龍さんは私を見る。

……というか、睨む。