「―――っ!!!」
一瞬で分かった。
―――九龍さん!!
声のした方へ足を進める。
冷たい風を切り裂くように、私は走った。
公園の裏、細い路地裏に彼はいた。
「九龍さ―――…」
……え、?
目の前にいるのは確かに九龍。
でも、自分の目を疑ってしまうほどの光景。
…彼は、誰?
着崩したスーツにべっとりと付いている赤い返り血。
足元には倒れこんでいる三人の男。
一人は私を見るように目をむき出している。
残りはうつ伏せで、顔は分からなかった。
九龍さんは四人目の男を髪を掴んで、壁に叩きつけていた。
男の額からは血が流れ出ていて、時々苦しそうに小さく声を上げていた。
前に逢った時の雰囲気はまるでなく、そこにいるのは狂気本能むき出しの虎のような男。
ここにいちゃいけない…。
気付かれないように、一歩…後ずさる。