「夏季は聖歌隊を目指していてね、毎日歌の練習をしてるんだ。今度レイも聴くといいよ」
「ぜひ聴いてみたいです」
詩織をこんなにも笑顔にする歌声なら聴いてみたい。
詩織はコーヒーを一口飲み、
「早速レイに仕事を頼みたい、と言いたい所なんだけど、その前にそいつをどうにかしないとな」
そいつ、と指差された黒猫は呑気に欠伸をしてまた眠りに入る。
このまま部屋に置いておくとまた荒らされるかもしれないし、だからといってずっと抱いてる訳にもいかない。
最初の仕事は猫の親探しだな。
「チラシを作って街で配ってみますか?」
「それいいな。よし、早速作ろう」
立ち上がる詩織にレイも立った。
「あ、私が…」
隊長にそんな雑用させるわけにはいかない。だが詩織は優しい笑顔を見せ、
「私がやるよ。レイはそいつを頼む。そいつを野放しにするとまた部屋が荒れる」
「分かりました」
仕方なくレイは猫と一緒にチラシの出来上がりを待った。