部屋を元通りの姿に戻し、レイは部屋の中央にあるソファーに座るよう勧められ座った。猫はレイの膝の上で丸くなって寝ている。
詩織はレイの向かいに座り、コーヒーを差し出しながら照れ臭そうに笑った。
「いや、何かみっともない所をたくさん見せて悪かったね」
「いえ」
詩織の態度が何となく可愛らしかったのでレイは笑顔で答えた。
「上の者から新入隊員が来るとは聞いてたんだけど、今日来るって事をすっかり忘れてて、いつものように朝の散歩に出てそいつに財布を取られた。ホントにすまない」
申し訳なさそうに頭を掻く詩織。
「毎朝散歩されてるんですか?」
「ああ、雨の日以外はね。朝の空気はとても気持ち良くてスッキリするんだ。散歩のついでに夏季の歌も聴きに行く」
「歌?」
今朝詩織を呼びに来たあの子。