｢いい飼い主が見付かるといいねー｣
夏季は猫の頭を撫で、
｢早くご飯食べに行こうよ。お腹空いた｣
｢ああ。お前も走り回ってお腹空いただろー｣
言いながら猫を高々と上げる。猫は返事をするようにニャーと鳴いた。
不思議な人だ…。レイがそう思った時、詩織が振り返った。
｢キミもありがとう。じゃあね｣
そして詩織は夏季と猫と一緒に行ってしまう。
その場に残されたレイは、二人と一匹が見えなくなるまでその後ろ姿を見ていた。
詩織…。名前も笑顔も雰囲気も、彼女が持つもの全てが優しい人だった。
初めて会ったのに、傍にいるだけで心が落ち着く。
また会いたい。そう思いながら第一部隊隊長室がある窓を見上げる。
｢もう戻ってるかな…｣
部屋に行こうと思ったが止めた。隊長との顔合わせは今日中に済ませればいいし、小腹も空いてきた。
それに、もう少し詩織の残していった優しさの余韻に浸りたい。