周りには誰もいないので、この人の名前は詩織か。
夏季と呼ばれた若い子は詩織の前に立ち、
「お昼食べに行こーって、どうしたのその猫」
詩織の腕に抱かれて気持ち良さそうにしている猫に気付く。
「ああ、どこからか入って来たらしいんだ。夏季飼うか?」
すると夏季は困った表情を見せる。
「教会はペット禁止じゃん。見付かったら怒られるよ」
教会ではペットを飼う事を禁止されているので、誰かが飼い主という訳でもないだろう。隠れて飼っていたのなら話は別だが…。
おそらく街から船に乗ってしまい、教会に迷い込んでしまったんだろう。この猫も見付けてくれたのが詩織で、場所が建物の中じゃなくて幸せだったろう。
詩織は猫を見下ろし、
「そうだよな。今度街に行った時に、誰か飼ってくれる人がいないか捜してみるよ」