「待って下さい。
私と直江先生は理事長が思われているような関係ではありません。
先生は何も悪くないんです。
私が学校を辞めます。
だから先生の退職処分だけはやめて下さい。
お願いします」
私も深々と頭を下げた。
そして頭を上げて次の言葉を言おうとした時
「羽田。もういいんだ」
先生は私の言葉を止めた。
「理事長、羽田はまだ高校生で悪いのは私です。
大人として教師として、
生徒一人守ることが出来なかった。
どんな処分でも受ける覚悟です。
ですから羽田の退学だけは許してやって下さい。
あと半年で卒業を迎えます。
みんなと一緒に卒業させてやりたいんです。
お願いします」
先生は再び頭を下げた。
「私はそんなの嫌!!」
先生の冷静な言葉に感情がこみ上げてきて
「卒業なんて出来なくてもいい!!」
瞳からはとめどなく涙があふれ出していた。
それを見た先生は
「理事長、
少しだけ羽田と話をさせていただけないでしょうか?」
そう言った。
「15分だけですよ」
理事長は自分の腕時計を見ながら言うと
部屋を出て行った。