私は精一杯首を横に振り
そして
その場に立ってその人にはっきりと告げた。
「先生は返すとかそういうものじゃない・・・
私は先生が別れたいと言えば別れます。
けれど直接その言葉を聞かない限りは側にいたい」
この言葉に、その人は一瞬怯んだように見えたが
それでも私に諦めさせようと必死に説得をしようとした。
その時だった。
「いい加減にしろ!!!萌の問題じゃない。
…俺が萌じゃないとダメなんだ」
その言葉に
しばらくの沈黙が続いた後で
その女性は部屋を飛び出して行った。
私は目に涙を溜め
その場に力なく座りこんだ。
「大丈夫か?」
その言葉に頷くことしかできない私を
先生は何も言わず優しく抱きしめた。
そして
夕日が差し込む部屋で
何時間もそのままで過ごした。
「先生。私は離れないよ。
卒業しても
ずっとずっと側にいるよ・・・」
優しく抱きしめていた先生の腕に力が込められた。
外はすっかり暗くなり
二人で乗り込んだ帰りの車の中。
そこはステレオから流れる音楽だけが聞こえていた。