ある朝

山川さんが騒がしく教室に入ってきて

まるで何かを中継している記者のように

「私、昨日見てしまった」


とクラス中に聞こえる声で話し始めた。


みんなが何事かと山川さんを注目すると



「実は昨日の夜、直江先生が
女の人と楽しそうに歩いているところを目撃したんだよね」

と得意そうに話した。





マユは私の側にきて

「相手は気付かれてないみたいだね」

小さな声で話しかけた。



「…違う」

私は小さく呟いた。



「何が?」


マユは思いもしなかった私の返事に思わず聞き返してしまったようだった。




「その女の人、私じゃない…」

消え入りそうな声でつぶやき机にうつ伏せた。