「適当に席について」
そう言って
教室を見渡し教壇に立った先生は
「今日から、このクラスの担任になった直江だ。
これから一年間よろしく」
と挨拶をした。
女の子たちの喜び合う声や、囁く声が聞こえてきた。
私も驚いて両手で口を押さえ、
マユの方を見ると
マユは誰にもわからないように小さくガッツポーズをした。
先生はクラスのザワザワが少し収まるのを待って続けた。
「今年は自分の進路を決める大事な一年だ。
目標に向かってしっかり頑張ってほしい」
そう言うと
みんなの顔を確認するように出席をとっていった。
その後で山川さんは
「先生は彼女いますか?」
と手を挙げて質問した。
クラスの女の子たちは先生に視線を集め、
「私も聞きたいと」と口をそろえ
その答えにワクワクを隠せず待っていた。
先生は一瞬、私の方を見た気がしたが、すぐに視線をそらし
「いない」とだけ答えた。
想像をしていた答えではあったが、何となく残念な気がした。
その後も次々と質問が飛び交う。
しかし、それに答えることなく先生はHRを続けた。
そして
先生は私に数学準備室に来るように言って教室を出て行った。