「何をしている!!!」
すごい剣幕の直江先生が走ってきて
私を抑えていた桂木先輩の両腕を掴み、
動けなかった私の体を自由にした。
「萌に何をした!!」
先生は桂木先輩のシャツを掴み問い詰めた。
「あんたこそ萌に何しているんだよ?
教師は教師らくしとけよ!!」
桂木先輩は掴んでいた先生の手を力ずくで離し続けた。
「あんたには萌を幸せに出来ない
会いたいときに会えない。
側にいても話せない。
高校生らしい恋愛もできない。
あんたが教師だからだ・・・
萌を泣かすだけだと思わないのか?」
桂木先輩の言葉は
今までずっと感じていた私の心の中そのものだった。
「お前なら幸せにできるというのか?」
先生は静かに聞いた。
「俺ならいつでも萌の思う様にしてやれる。
コソコソ隠れて付き合う必要なんてないからな」
強気で答える桂木先輩に
「お前に俺達の何がわかる?」
先生はとても悲しそうに弱々しく問いかけた。
「あんた達の事なんて分かるつもりはない。
・・・けど、
あんたに萌を渡したくない!!」
このやり取りの中で
私はどうすることもできず泣き崩れていた。
そんな時
先生は真剣に言った。
「俺も…
…俺も誰にも萌を渡すつもりはない」
その言葉に顔を上げ
先生をただ見つめた。
先生の言葉に桂木先輩は驚きを隠さなかったが、
「俺は諦めない。
いつか萌をもう一度振り向かせてみせる」
そう吐き捨て、
去ろうとした桂木先輩に
「そんな事はさせない」
先生は呟くように答えた。