深呼吸を一つした後に

数学準備室のドアを2回ノックして入った。


そこは
すでに他の先生は帰っていて、直江先生だけしかいなかった。


ドアを閉めて入口の所に立ったままで

「あの・・・」


かける言葉が見つからず戸惑っていると


先生が声をかけた。


「萌はいい友達を持っているな。
鈴木がすごく心配して俺のところに来てくれた」

先生の言葉に私は一つ頷いた。


「こっちにおいで?」


「いいの?」


私は恐る恐る尋ねた。


「あぁ」


言われたとおり先生のそばまで歩いて行った。


「桂木先輩のことだけどね…」


先生は私の言葉をさえぎるように

私を引きよせ

私の口を先生の唇で塞いだ。




「誰か来たらどうするつもり?」

「大丈夫だよ」

微笑みながら答える先生。




それから
桂木先輩の話をしようとしたら

「何も言わなくていい。
心配するな」


そう言って

先生は自分の膝の上に私を座らせ

後ろから抱きしめたまま

何も言わず

しばらくの間そうしていた。