私は一歩下がるように先生からそっと離れ

そして先生を見つめた。
  



私は涙を拭って


「でも、先生にも辞めて欲しくない・・・」

そう言った。




先生は遠くを見るように宙を見つめながら


「そうだな・・・・」


小さく微笑む様に呟いて


天井を見上げて目を閉じた。



先生はほんの少しの間そうしていて

何も言わなかった。







時計の針が時を刻み込んでいく。

その音だけが響くこの部屋で
私は先生だけをただ見つめていた。



先生の姿を脳裏に焼き付ける為に


そして

二人で過ごした時間を


忘れないように・・・







しばらくして

先生は何でもない風にほほ笑み
口を開いた。



「何も心配するな。

萌はきちんと卒業するんだぞ」




いつもみたいに話そうとする先生の声は

少し震えていて

瞳の奥には光るものを覗かせていた。





私はそれにひとつ頷く。





「私は大丈夫。
ちゃんと卒業するね。

約束する」






私は溢れそうになる涙を必死にこらえて笑顔を向けた。