外に出ると、横断歩道の前で信号待ちをしている若い女の、茶色い背中が目に入った。この日は特に暑かったので、露出度の高い服を着た若者で溢れていた。

池袋は渋谷、新宿、に次いで、若者が見られる事を意識して集まる街なのかもしれない。
きっと男女がそれぞれ、不特定多数の異性、あるいは同性を意識している。

香水や汗の匂い、飲食店が出したゴミ袋から漏れ出した何かの液体が地面を汚し、それが陽に晒されて異常な臭いを放っているのか、なにかの匂いが鼻につく街だ。


しかし、この街をメインシティとして暮らしていると、こういった部分もそんなに嫌でも無くなってきてしまうのが不思議だ。


本屋の隣のスターバックスに入り、アイスモカを注文した。

『同じものを』

その男が俺の注文を繰り返す。同じなのは顔だけにして欲しい。

外が暑いだけに、店内は込み合っていた。 少しの間立って待つと、丁度窓際のソファ席が空いたのでそこに座った。

その男はどうやって見ても、あまりに自分にそっくりなので、依然続いた驚きのあまり、俺はまだ何かを言いだす気になれないでいた。寧ろ真坂教授の言う通り、不気味で仕方なかった。

男はカップの周りについた水滴を紙ナプキンで綺麗に拭き取り、底に敷いた。一段落着いたのか、俺の顔を見てこう言った。

『やっと見つけたよ』