「バカ、風邪引くよ」
「大丈夫」

そう言いつつも彼の手は冷え切っていて、私はそれを両手で包み込んだ。

「何かあった?」

優しい声。心配してくれてる‥‥?

「ううん、何で?」
「最近、帰りに会わないから」

その言葉が、“会いたかった”と言ったように聞こえた。

真実を言えないもどかしさもこめて、ごめんね、と呟いた。