「山口、お前も出ろ。Bに入れ。」


「…は、はいっ!」


挙動不審に山口くんが答える。

山口くんはうまい。
ただし、性格にちょっと難がある。自己主張が苦手で目立つのを嫌がる。一言で表すならば極度のシャイだ。


そして、AチームとBチームのゲーム(5対5)が始まる。


この時間こそが鬼コーチが常に目を光らせている地獄の部活の中で最高のリラックスタイムだった。


コートではまた園田コーチの怒号が飛び交っていた。
しかし、僕らにとってはどこ吹く風。


目前にある地獄は体育館に引いてあるライン一つで完全に他人事となっていた。