僕は全速力で走りながら、そっとコート隅のぐっちゃんの所に行き話しかけた。


「山口くん、出るかな」

「ん〜。たぶん呼ばれるっしょ」


ぐっちゃんが返す。


そこにニヤニヤしながらヒョロヒョロと『山口くん』が駆け寄ってきた。空気の読めない男だ。



この3人で学校でも休みの日でも一緒に遊んでいた。
山口くんの家にはバスケのリングがあり、休みの日になればそこに三人集合しバスケをしていた。僕はその時間こそが何よりも楽しく、そして大切だった。



「こらぁ!!!そこ!さぼってんの誰だ!」


コーチの怒号が響く。コートの隅に三人も固まっていれば当然だ。

コートの隅っていうものは、ごく少数でいてこそ効果を発揮する。