走る馬車の中、レイブンは布がかけられた自分の檻でその声を聞いた




「すみません!」




女の声……よく通る凛とした声音だ



馬車が止まりしばらくして先ほどの声の主が現れた


少女だ


頭をバンダナで覆い身体もマントを羽織って隠していた



それを布の隙間から覗いていたレイブンは不審に思った


椅子に座り少女を乗せたおばさんは気にした様子もない



少女は琥珀色の大きな瞳で馬車の中にある檻を見る、その瞳にほんの少し緊張が走る



レイブンは更に不審を深める


旅人にしては若い、自分より少し下ぐらいだろう
荷物も少ない、何より見せ物小屋だからといって緊張するだろうか………普通の『旅人』が




レイブンは、気配を殺して少女の様子をうかがう




しばらくして、少女の首筋に決定的なものを見て取りレイブンは確信する





……チャンスは今しかない