「レイブン!何やってんだい!」



レイブン………漆黒の翼を持った少年は気だるげに振り返る


見せ物小屋の古参のおばさんが喧しく怒鳴る



檻の外でふらふらしていれば、目ざとく見つけて鎖を引っ張る



鎖……檻の外に出されても首に繋がれた鎖が本来の自由を奪っている



「何だよ……トラスケなでるくらいいいだろ」



同じ境遇、檻の中の白い虎の頭をなでていた
昔からじゃれあっていたので危険はない



次の町へ向けての準備に慌ただしい団員たちは忙しなく動いている



その様子を見ながらレイブンは考えていた



「……なぁトラスケ、上手く外で生きるには準備が必要だよな」



硬い毛並みをなでながら呟く
その瞳には鋭い光が宿されていた



……もう少しだ、あとはチャンスだけだ





鎖で繋がれたレイブンが団員一人ひとりの動きを注意深く見ている事は誰も知らない





ゴロゴロと喉を鳴らせてなでられている白い虎だけがその様子を見ていた