体育館に響く歌声
 すんと鼻をすする音
 溢れる涙と震える口唇に
 邪魔をされる答辞

 そんな空気の中
 私は流れそうな涙を耐えるのに
 必死だった。

 他人の卒業式で
 こんなに複雑な気持ちになるのは
 初めてで、小学校の卒業式も
 中学校の卒業式も
 サヨナラの羅列に悲しみなんて
 存在しなかったはずなのに……。

 卒業って言葉、
 こんなに重かったんだ。


 卒業式が終わり、
 別れを惜しむ3年生の姿に
 涙を誘われる。そんな中、
 場違いだと思われるほど
 満面の笑みを浮かべた
 陽介先輩が、私の前に現れた。


 「陽介先輩、ご卒業
 おめでとうございます」
 「なんだよ改まっちゃって~っ!」
 「最後ですからねっ!」