「ばかっ!お前らが恐いんだよっ」


 仲間の頭をばしっと叩きながら
 そう注意をした人物が1人。
 それが…

 ――陽介先輩だった。


 「陽介いてぇーよっ!」
 「なぁ陽介、この子達じゃない?
 今噂になってる可愛い1年生って」
 「え!まじで、?」
 「だから今話しかけようとしてたん
 だろーがっ!」


 悪い悪い!口ではそう言いながらも
 顔はまったく反省してないどころか
 陽介先輩はへにゃへにゃと
 笑みを浮かべていた。
 そんな先輩達のやりとりを
 戸惑いながらも見ていると、
 陽介先輩と目が合ってしまった。


 「君、名前なんてーのっ?」


 そう名前を聞かれた私は、
 身体中の血液が沸騰するような
 感覚に陥った。早く答えなくては
 いけないと、気持ちだけが焦って…


 「…はっ、長谷川、美緒で…す」


 くぐもった、消え入りそうな
 小さな声で精一杯答えた。