沖は呟いて背中にいる白峰を下ろした。
「千鶴子」
 煙を吸ってしまったのだろう。白峰は息も絶え絶えだ。その姿はもう白峰ではなく、千鶴子そのものだった。
「鬼の火よ」
 沖は窓の外を見た。白い月が、火の向こうで赤く燃えていた。
「千鶴子……」
 朱色に光る月は千鶴子の美しい唇そのものだった。