パチッ。木が燃える音がする。
「俺を殺すのか」
 沖は背中の痛みを忘れていた。
「千鶴子を死なせたから俺を殺すのか」
 流産した時、千鶴子は一緒に死んだ。千鶴子が十三の時だ。あの日の夜、裸で狂って死んだのは千鶴子の方だった。
 初めて抱いたわけではなかった。初めてどころか、最後に抱いたのだ。
「あんたが千鶴子をおおおお」
 火はもう部屋を全部覆っていた。
 自分は誰を愛していたのだろう。沖は思った。やはり千鶴子だったのではないだろうか。死んでしまった千鶴子を追って、気のふれた白峰を抱いていた。
「千鶴子」