「思い出せない?」


「わ、悪い、ちょっとわかんない」


「そっか。ん、まぁいいけど」


スネているようなその言葉には、どこか諦めの色が混じっていた。

申し訳なくなりながら、俺は必死に思い出そうとするが……やはり何も思い当たらない。

六年という時間はこんなに大きいものか、それとも俺の脳みそが腐っているのか。

自慢じゃないが記憶力の自信のなさは折り紙つきだ。

……本当に自慢にならないな。

いやこんなことを考えている間に思い出せばいいだろ、本当に要領が悪いな俺はとか悩んでいると、


「何コレ?」


少女が素早い手つきで、俺の手にあったケータイを奪い取っていた。