「覚えていないなら、これからまた覚えてもらえればそれでいいから」


はにかむように紫は笑った。

なんだか釈然としないながらも、「そっか」俺は頷いた。

どうせ思い出せそうもないし、まぁこの子が満足するならそれでいいか。

どうせこの夏限りの付き合いだろう。


「それじゃ、また明日ねー!」


そう言って紫は走って行ってしまう。

やはり尋常ではない足の速さで、あっという間にその姿は見えなくなってしまった。