「やっぱり悠君優しいね」


「はぁ?」


突然親しげに微笑まれ、戸惑う。

以前から知っているような素振りはこれで何度目か。

しかしそれでも俺の脳内にはこの少女のことが全く記憶にない。


「なぁ、ホントに申し訳ないんだけど、俺全然お前のこと知らないんだけど」


「ゆかり」


「は?」


「紫って書いてゆかり。私の名前」


そりゃまた随分とハイカラな名前だこと。

しかし涼しげというか和っぽい名前が少女、紫にはよく合っている気がした。