「でもね、その幸せは夢なの。
ちょっとでも見えちゃったら、憧れてしまうの。
手を伸ばしても届かないって、ちゃんと分かってたつもりだったのにな」


何故か紫がぼやけて見える。

俺も、泣いているのか?

目をこする。

涙は、手につかない。


「最初は、ほんのちょっとのつもりだったんだよ。
恋愛ごっこに憧れたの。
私も大人になれるのかなって。
いつも通りの、遊びのつもりだった。

でもね、知ってしまったの。

そういう幸せがあるんだって」


なんでぼやけて見えるんだろう。

なんでこんな目の前で話してるのに、見えないんだろう。

なんで、声はこんなにハッキリ聞こえるのに。


なんで。


「幸せだったんだ」