何かがおかしいというのは分かるのに、掛け違えたボタンを、本当はどこにつけ直せばいいのか、分からない。


「ねぇ、悠君」


紫が囁く。

俺は黙ることしかできない。


「私ね、嬉しかったんだ」


何が、とは声にならない。

だから、俺はただ紫の言葉に耳を傾ける。


「大人になっても私のことを見てくれる人がいてくれること。
だからね、期待しちゃった」


紫が笑う。

寂しそうに。