「ねぇ、悠君」


隣に座った紫が、ちょいちょいと俺の袖を引っ張りながら、こそこそと声をかけてくる。


「何よ」


「さっきの人達、すごかったね」


さっきの? と首を傾げ、あぁ、あのカップルのことか、と思い出す。

全く、ところ構わずイチャつきやがって。

憎たらしいったらない。

別にうらやましくなんかない。

全然。これっぽっちも。

ふん。