紫が登ったのを確認した後、続けて俺もよじ登る。

まさかこの歳になって、木登りまでするなんてな。

二人も乗って大丈夫か、と心配したが、存外木は丈夫で、てんでへっちゃらな顔をしていた。

たくましいもんだ。俺の目標にしよう。


「お、すげー。案外ちゃんと見えるな」


「でしょ?」


枝葉が邪魔をするかと思いきや、そこだけ見事に視界が開けていた。

これなら問題なく花火も見えそうだ。

周囲から人のざわめきが遠のき、虫の声だけが辺りに響く。

少しだけ、秋の虫が鳴いている。

いくら毎日暑くたって、いつまでも夏じゃないんだなぁ、なんてしみじみかみ締める。