「さっきからそうだって言ってんだろ」


「じゃあ、返してあげる」


あれ、大人しく返してくれる気になったのか。

拍子抜けしていると、


「ただし」


と言葉が続く。

やっぱりな。なんとなく予想はついていた。


「なんだよ」


「私と遊んで?」


首を傾げてみせるその様は、見る人間によっては愛らしく映るのだろう。

ウチの両親などはメロメロに違いない。

だが今の俺にとっては悪魔の誘惑のようにしか思えなかった。

ほんとに子供はずるい。

自分の魅力を分かっているヤツはなおのことだ。