そう言えば、いつもうるさい紫がずいぶん静かだな。

気になって紫の方へ振り向くと、「うわー」と小声で呟く紫。


「なんだよ？」


と尋ねると、無言で紫が指を差した。

その先には、人気がないのをいいことにベタベタとしているカップルが。

互いを触る手つきが非常に艶かしい、ってうわ、ちょ、これは目に毒だろ。


「こら、子供が見るもんじゃありません！」


小声で言いながら、俺は紫の目を手で覆うが、しかし紫はするりとその手から逃れる。


「だから、子供じゃないってば……あ、ちゅーした」


どうやらカップルはすっかり自分達の世界の中のご様子で、そりゃもう好き勝手やりなさる。

ってこら、男！　浴衣に手を差し込むな！