食べ物を食べながらも、人混みの中をまるで水を泳ぐ魚のように、紫はすいすいと進んでいく。

気を抜くと置いていかれそうで、少し焦りながら俺は紫の後を追いかける。


「おいちょ、待ってくれよ、ちょっと休憩!」


呼びかけてようやく紫がこちらを振り向いて止まる。


「はー、だらしないなぁ、もう」


仕方ないと言わんばかりにため息をつき、紫はちょいちょいと俺を手招きする。

追っていくと、人気のない、神社の裏側へと案内された。

人の声が遠ざかり、代わりに虫の鳴き声が耳に静かに入り込んでくる。