「いやいやいや、やれねーって、それ、大事なもんだから」


小首を傾げる仕草は可愛らしいが、それだけでやるわけにはいかない。

現代っ子の俺にとってケータイは必要不可欠、なくしたら若者としての生命線を絶たれるようなもんだ。


「いいじゃない別に」


さらっと言ってみせる少女。

ちくしょう、簡単に言ってくれる。

俺の友情の命綱なんだぞ。


「いやそれ大事なもんだから、返してもらわないと困るんだよ」


俺が真剣に困っている様子を見て、少女が再び笑う。

ただし、先ほどとは打って変わった、なんとも意地悪そうな笑み。


「ふーん」


にやり。


音まで聞こえてきそうな笑い。

年相応と言えば年相応、ていうか妙に堂に入っていて逆に気味が悪い。