早速、製作に取り掛かるため材料の調達に出かける。

うさのが向かったのは、ペットショップではなくコンビニだ。

ペットショップには、かぼちゃの形やログハウス風など、様々な形の「ハムスターのおうち」なるものが売られているが、そんなものには興味はない。

それらは、ハムスターそのものよりも値段が高かったりするのだ。

ハムスターより高いおうちを買ったら、一体自分はハムスターを飼っているのか、それともおうちを飼っているのか分からなくなりそうだ。

そもそも、うさのには趣味の品を買うという発想があまりない。

うさの家のおもちゃは大体手作りかいただきもの。

良くて、お菓子のおまけだった。

うさのが子供の時分、巷では「シルバニアファミリー」という玩具が流行っていた。

それは、うさぎやりすの一家のお人形たちが、ドールハウスのようなおうちで暮らす、という設定で遊ぶ一種のままごとで、玩具売り場にはその基本セットとなる人形やおうちに加え、おうちの中に設えるミニチュアの家具や食器などが、色々と売られていたものだ。

「森の動物」「おうち」「ミニチュア」など、シルバニアファミリーの玩具は子うさのの心の琴線に触れるポイントをよくおさえていた。いや、触れるどころかジャランジャランと心の琴線をかき鳴らしまくっていたのだが、なにしろ値段が高くて全く手が出せない。

そういうわけでうさのは、シルバニアファミリーもどきを自分で作って遊んだ。

ティッシュの空き箱は、おうち。

三段ボックスはマンション。

こたつは山。

こたつ布団にすきまを作って、洞窟。

電気の延長コードで、川。

憧れのシルバニアファミリーには似ても似つかないのだが、足りないところは想像の翼で補って、時間が経つのも忘れて夢中で遊んだものだ。