うさのは身を起こし、音を立てないようにそっとケージの扉を開けた。

中に手を入れ、少しずつマーブルが中にいる綿に手を伸ばしていく。

あせりは禁物。少しずつ、少しずつ。

これに成功したら、うさのは「世界で初めて、ハムスターを起こさずに布団をはがした人」になるのではないだろうか。

うさのの脳裏に、またしてもメロディが流れ始めた。

(「地上の星」のメロディで)

♪カゴの中のマーブル~

綿の中にマーブル~

ハムはどこにいーるの~

見守ぉりすぎてる、わーたし~♪


テレビからの取材に答えている、自分を想像する。

「名誉がほしかったわけじゃ、ありません。ただ・・・・・・」

綿に、指の先が届いた。

マーブルが寝息をたてている、かすかな振動が綿を通して指に伝わってくる。

「ハムスターのかわいい寝姿が見たい。ただ、それだけです」

はやる心を抑えながら、うさのはそっと、綿の端をつまんで持ち上げた。