「皆瀬くん!!」
廊下に
学校が始まるチャイムが響いた。
「ちょっと、来て」
皆瀬くんは私の手を掴んだ。
来た場所は
屋上だった。
「俺ってオマエにとって、
どんな存在?」
「そんなの…
私の彼氏よ!」
「ふーん…
彼氏がいて、
他の男とはやるんだ」
「だから…違う」
私は
彼氏にさえ、
ウソをつく。
「もういいよ。
俺、見ちゃったんだ」
「え…」
皆瀬くんの顔が
こわくなった。
いつもと…違う
「ひ…人違…いじゃ、ない!?」
声が震えてて、
ウソがつけない自分。
「オマエの家がどういう事情であろーが、
最低なことしてるぞ?
もう知らね」
皆瀬くんは
ため息をつき、
屋上から出て行こうとする。
呼び止めたくても
声がでない。
近寄りたくても
足が動かない…
私はそこに、
泣き崩れた。
あぁ
私はまた
1人になってしまった…
「あれ、さゆみちゃん」
私じゃない名前を呼ばれ、
首を箭内さんのほうに向ける。
私はまた
ホテルにいて
他人に抱かれていた。
この人の前では、
上原美里じゃなくて
早川さゆみを演じる。
「もう服着ちゃうの?
もう1回―…」
「このあとも予定あるんで」
「ふーん…
忙しいね。今日で3人目かあ…」
私はすみませんと言って
ホテルを後にした。
次に、いつもの
ホテル・SKYに行った。
「遅かったね、香苗ちゃん」
-香苗ちゃん。
松坂さんの呼び名だ。
「すみません、
前にも入っていたものですから」
「大変だなぁ、香苗ちゃんは。
そうだな…
まるで蝶々みたいだな」
「…蝶々…ですか。」
「こんな真夜中に
いろんな男に飛び交う
しかも香苗ちゃんは美人さんだしね」
松坂さんの手が私に伸びる。
その手は
服の中をまさぐっていた。
「アァん…ちっが…います…ッ…」
私は
今夜3人目の蜜を吸った。
―――次の日……
事件が起こった。
学校をサボって
松坂さんといつものホテル・SKYで約束をしていた。
しかし、
今日は松坂さんにメールをしても返ってこない。
―――なんかあったのかな……
約束の時間が過ぎても、
来なかった。
「なんで…」
私は
立って部屋から出ようとした。
――そのとき……
--バン バン バン
突然部屋のドアを叩く音。
「な、なに!?」
-こわい…
「香苗ちゃぁーん」
-松坂さん!?
香苗ちゃんと呼ぶのは
松坂さんしかいない
だけど松坂さんの声ではない…
私はドアから離れた。
笑い声も聞こえる。
1人じゃないんだ…
「だれ…?」
「とにかく、開・け・て☆」
「松坂さんは-…?」
「代わりにヤって来いって
言われた☆」
「なんかねー
奥さんにばれちゃったんだってー☆」
「え…」
「松坂さんがね、
香苗ちゃんなら誰でも抱かせてくれるって言ってたよぉ」
気づいたら手が震えていた。
―こわい
こわい…
「早く開けてよぉー」
私はケータイを手に取った。
け、けいさつ!
-ダメだ…
学校にばれる…
友達は…いない…
親戚…知られたくない…
私は、
電話帳を一気に見る。
――皆瀬くん……っ
皆瀬くんしかいないっ!!
私は時計を見た。
昼休みだから大丈夫だよね…
-プルル…プルル…
呼び鈴が心に強く響く。
ドアを叩く音も聞こえる。
-お願い…
出て…
「…はい」
ケータイから
低い声が聞こえた。
「み、皆瀬くんっ…」
手が震えていて、
ケータイがちゃんと持てない…
「なに?」
私は深呼吸して
言う。
「今…今!ホテル・SKYの605号室にいるの…
早く来て…
あたし襲われる…っ…」
皆瀬くんは黙った。