「真菜、別れようか。」

その台詞が聞こえると、もう頭は真っ白で…

覚えているのは、表情が読めないくせに悲しそうな彼の顔と、カランと鳴った氷の音、それだけ。

彼は確かに私を愛して大切にしてくれた。

私も…

…私は?

彼に好きだと言われてこの恋は始まった。

生まれて初めてされた告白にただ舞い上がって、うれしくてたまらなかった。

ドラマや少女漫画に憧れて理想ばかり描いて、彼には悪いけれどその時はただ“彼氏”という存在が欲しかっただけだったのかもしれない。

“好き”なんて感情も知らずに走りだした私たちの恋愛。

優しすぎる彼は、私よりも私の気持ちに敏感で、この恋の結末もずいぶん前から分かっていたんだろう。