「何で??どうしたの急に…」


肩越しに少し振り返って、お母さんは笑った。


「何、江夏…彼氏できたの??」


「違っ…!!違うよ、違う違う!!彼氏なんかいないよ!!」


なぜか急に顔が赤くなってきたのが自分でも分かる。


「顔、赤いぞぉ-!!正直にお母さんに話しなさいよッッ!!!」


「やだ!!もう話さない!!あっ!!違う!!聞いただけ!!!」


「話さないって…あぁそぅ…お母さんには話してくれないと。お母さん超ショック…」


お母さんはそう言うと泣き真似をしてみせた。


私が一番弱いリアクションだ。


「分かったよぉ!!だからやめてよ、その嘘泣き!!!」


私がそう言うと、お母さんは顔をあげて舌をだして笑った。


「だから先にお母さんの答え聞かせてよ。さっきの質問の答え!!!」


「あぁ…質問の答え…ね」


そう言うと、お母さんは


「あるよ。今でも忘れられない人が一人だけいる」


そう答えた。


「…それって、お父さん??」


一瞬、空気が固まった気がした。


"しまった"そう思った。