上総のかつての思い人が、上総の背中に描かれている。

見たいような、見たくないような...複雑だった。


「江夏のお母さんは??やっぱ理由とかあったの??」


それを聞かれて衝撃を受けた。

知らない。

お母さんの背中にある入れ墨の理由を。

物心がついた頃には既にあった。

赤に彩られた昇り竜があった。

今まで一緒に生活してきて、一度だって昇り竜の理由を聞いた事がない。


「...知らないんだ。物心ついた頃にはもう彫ってあった」


バツ悪そうにあたしは答えた。