「どうでもいい事だって言えるような思い出なら何で一生消えない入れ墨なんかで表現したの!?」


思わず声を荒げてしまった。


「...あっ...ゴメン...」


驚いた上総の顔に、我に返った。


「あたしのお母さんも...入れ墨背負ってる。あたしが本当に子供の頃から...背中一面に昇り竜の入れ墨。小さい頃お母さんの入れ墨で引っかかって温泉にも行けなかったりプールも行けなかったり...何かそんなん思い出しちゃって...ゴメン」


言わなくていいような事を言ってしまった。


「そっか、俺こそゴメン...江夏の言う通りだね。俺の背中に彫ってあるのは遊女。俺が今までで一番好きになった人が、風俗嬢だったんだよね。東京出てきて最初の方、本当俺を助けてくれた。大好きだった...でも客とのもめ事が原因で自殺しちゃってさ...それがあったから、俺その人を背負おうと思った。だから彫ったんだよ。」


聞かなきゃ良かった。

あたしは勝手だ。

理由を聞いといて、嫌な事思い出させて、それで聞かなきゃ良かったと思う。