一通り注文を済ませて、上総もあたしも煙草に火を点ける。

ふぅっと煙を吐き出した時、上総の手首に何かあるのを見つけた。


「...入れ墨..???」


つい言葉に出してしまったのを今更ながら後悔する。

上総にとって気付かれたくないものだったらどうしよう...そう思ったから。


「ああ、これ??凡字。入れ墨ってか、タトゥーだよね。背中には和彫りがあるよ」


心配は無用と言わんばかりの笑顔で上総は答えてくれた。


「ゴメン...聞いちゃって良かった??」

「全然!!金かけたよお。見たい??背中」


そう言われると見たくなる。

だって、お母さんも入れ墨を背負ってる。

背中一面の昇り竜。


「何で...何で彫ったの??」


そんな事を聞いた所でどうにもならない...でも聞いてみたかった。

もし上総が何となく入れ墨を背負ったならあたしは許せない。

お母さんが背負ってるから余計にだ。


「ある一つの思い出。忘れられない思い出を戒めにするつもりでそれを彫ったんだ...まあどうでもいい事だよ」


上総は笑った。